小腸の細菌が肝臓の線維化に関わることが判明、常在菌アッカーマンシア ムシニフィラが改善を促進

学校法人杏林学園

小栗 典明 (杏林大学医学部消化器内科学 大学院生)

三好 潤 (杏林大学医学部消化器内科学 准教授)

久松 理一(杏林大学医学部消化器内科学 教授)

 

[概要]

慢性肝障害により肝臓の線維化が生じます。そして肝線維化が進行した状態である肝硬変は社会生活や生命予後にかかわる疾患です。腸内細菌叢は宿主の健康状態に影響を及ぼし、腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が様々な疾患と関連するとされ、肝硬変と腸内細菌叢との間にも密接な相互作用「gut-liver axis」が存在すると考えられてきました。しかし、その詳細は明らかではありませんでした。また、近年、肝線維化・肝硬変は慢性肝障害の原因を排除することにより改善する可能性があると認識されるようになりましたが、改善を促すような治療法は確立されておらず、重要な臨床的課題となっています。本研究では、肝硬変モデルマウスを用いた検討を行い、腸管の中でも特に小腸の細菌叢が肝線維化の病態に関与することを示しました。これにより「small intestine-liver axis」という新たな概念の提唱に至りました。そして、同モデルマウスにおいて、ヒトにも常在する細菌種であるAkkermansia muciniphila(アッカーマンシア ムシニフィラ)(A. muciniphila)の小腸における増加が、肝線維化の改善と相関することを見出しました。さらに、A. muciniphilaを肝硬変モデルマウスに経口投与することで、肝線維化の改善を促進することを明らかにしました(図1)。本研究の成果は、小腸細菌叢を標的とした肝線維化・肝硬変に対する新規治療法の基礎的知見となることが期待されます。

[掲載論文]

発表雑誌:npj Biofilmes and Microbiomes

論文タイトル:Akkermansia muciniphila in the small intestine improves liver fibrosis in a murine model of liver cirrhosis

著者:Noriaki Oguri, Jun Miyoshi, Yuu Nishinarita, Haruka Wada, Nobuki Nemoto, Noritaka Hibi, Naohiro Kawamura, Sawako Miyoshi, Sonny T. M. Lee, Minoru Matsuura, Takako Osaki, Hisamatsu Tadakazu. doi:10.1038/s41522-024-00564-y

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≪本件に関するお問合せ先≫

杏林大学 広報室

E-mail: koho@ks.kyorin-u.ac.jp

電話:0422-44-0611(広報室直通)

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上場
未上場
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設立
1966年04月